電動自転車は本当に楽なの!? 奥多摩の山道で検証してみた
電動自転車といえば、電動アシスト。坂道で絶大な効果をもつという、電動自転車のアシストを実感してみたい!
良い坂道を探した結果、奥多摩の山道を電動自転車で走ってみることにしました。
- 電動自転車で山道をサイクリングするよ!
- わーい、奥多摩だー
新緑が眩しい5月の奥多摩でサイクリング! 電動自転車で、坂道をどこまで登れるのかを検証します!
奥多摩の大自然(坂)を電動自転車で登る
電動自転車といえば電動アシストです。電動アシストの効果を感じられるスポットと言えば、坂道です! そういう理由で、奥多摩の山道を電動自転車で登ることにしました。
なお奥多摩まで電動自転車を持っていくのは流石に無理だった(経費で買ってもらえなかった)ため、今回の挑戦は奥多摩駅のレンタルサイクル「トレックリング」さんでお借りします!
レンタルサイクル トレックリング
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- 受付時間
9:00~17:00(貸出し受付は15:00まで)
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- 定休日
土日、祝日営業(来店前にお問合せください)
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- 住所
東京都西多摩郡奥多摩町氷川197
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- 電話番号
0428-74-9091 / 080-1024-4617
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- 公式HP
トレックリングさんはパナソニックの電動自転車に加え、ブリヂストンなどのマウンテンバイクやクロスバイクなども取り揃えるレンタル自転車屋です。レンタル料金は機種により異なり、1日2,500円〜5,000円で自転車を借りられます。JR奥多摩駅から徒歩一分という好立地に加え、青梅駅で乗り捨てもできる利便性の高さが奥多摩観光にうってつけ!
奥多摩の地を熟知するトレックリング店長の大友さんに「最も勾配がきついルート」を教えてもらい、電動自転車のアシスト力を味わってみたいと思います!
勾配が一番大きいルートを選定
奥多摩駅からトレッキングするルートは大きく分けて4種類。
- 【青梅駅】下り坂で長距離走行するルート ※青梅駅で乗り捨て可
- 【奥多摩湖】ゆるい勾配で長距離走行するルート
- 【日原鍾乳洞】ゆるい勾配で長距離走行するルート
- 【海沢渓谷】急勾配で短距離走行するルート
- トレックリング店長の大友さん! 勾配が一番きついルートをください!
- 海沢渓谷ルートですね
急勾配が続く海沢渓谷ルート
標高350mの位置からスタートし、なだらかな下り坂と上り坂を越えた後にきつい坂道が3kmも続くルート。自転車で登ったところに3つの滝をめぐるトレッキングコースがあり、奥多摩の自然に包まれながら気軽に山歩きを楽しめます。
一番奥に存在する「大滝」は落差23mにもなるそうですが、当日は小雨が降っていたため足場が悪く、トレッキングは断念。坂道と電動自転車に集中します。
もちろん渓谷を登って終わりではなく「レンタルショップに帰るまでがサイクリング」なので、電動自転車のバッテリー残量との戦いになりそうです。
パナソニックの電動自転車を借りました
パナソニックの電動自転車、Hurryer(ハリヤ)、Sugar Drop、Little Bee、GLITTERの4機種から、今回の坂登りに使用する2台を選択しました。
この日は雨上がりの濡れた山道を上っていく予定でしたので、滑って転びにくい太めのタイヤと泥除けが搭載されている機種を選択します。
そして、荷物を入れるために前かご付きの機種を希望したところ、私はパナソニックのシティサイクル『Sugar Drop』。つるはミニベロスポーツバイクの『Little Bee』に決定。レンタル料金は共に3,200円!
Suger Drop
「女性に一番人気の車種をください」と言ったらこの機種をおすすめされました。パナソニックの『Suger Drop』、少し前に販売されていたモデルです。
サドルに腰掛けると上半身がしゃんと立つタイプの自転車です。20インチの小回りがきくタイヤに、雨に濡れた道でも泥がはねない泥除けが付いています。そしてデザインが可愛い。腰に負担がかかりにくいのも女性に人気なのかもしれません。前かごが付いていることと、サドルが柔らかめでお尻が痛みにくいのが決め手となり選んだ一台です。
Little Bee
2011年ごろに出たパナソニックのLittle Bee。こちらも少し前に販売されていた20インチの機種ですが、乗車すると少し前傾姿勢になるのが特徴です。
前傾姿勢の自転車は見た目がカッコいいですし、ペダルを踏み込みやすくなるのでスピードが出やすいです。しかし慣れないうちは腰に負担がかかるそうなので、腰に不安がある人は要注意です。それにしたってカジュアルでカッコいいですね。
電動自転車のバッテリー残量は簡単に確認できる
パナソニックの電動自転車、少なくとも今回お借りした機種は全2箇所でバッテリー残量の確認ができます。一つは手元のスイッチ。
アシストを始動する時やパワーを調整する時にも使うスイッチですが、バッテリー残量が常に光って見えるので走行中でも安全に確認できます。
そしてもう1箇所はこちら。
より正確なバッテリー残量を確認するには、バッテリーそのものの表示を確認します。スイッチを押すと光るので、バッテリー消費を最小限に抑えながら詳細なバッテリー残量を確認できるのです。
ちなみにバッテリーにもロックがかけられるので、何者かに持ち去られる心配はありません。
山間部に熊が出る
- 熊が出やすいのってどこですか
- 熊は奥多摩方面全域で100%出ないとは言い切れないです。この間もこの辺りで出たと聞いたような……
※決行日は2017年5月25日、行き先は海沢林道です。
熊は山で遭遇したくない野生生物のトップクラスで間違いありませんが、その中でも親子連れは危険な存在です。不用意に子熊とニアミスすれば、必ず近くに居る母熊が何をしだすか分かりません。つまり『歩くデストラップ』のような存在と言ってもいいでしょう。
そんなツキノワグマの親子が、これから行こうとする目的地で3日前に出没しているのです。まだ近くに居るかもしれません。
- よし行こう! 熊を探そう!
- (正気を疑う)
- えぇっ……じゃあ一応、注意してくださいね……
一番きつい坂がそこにあるなら仕方ない、そんなこんなで警戒しながら行くことにしました。具体的にはとにかく会話し続けるなど、声を出しながら進むといった感じです。
ちなみに熊に出会ってしまった場合は、すぐに背中を向けると襲われるリスクを高めてしまいます。目を離さないままジリジリ下がって、距離を稼いでから坂道を下って逃げ切るイメージだそうです。
- (雨降ってるんだし延期しておけばよかった……!!)
電動自転車でサイクリング開始!
自転車にのるのも数年ぶりですし、自転車で車道を走るのも初めてです。隣を走るトラックが起こす風圧の恐ろしさたるや!
電動自転車は重量があるから重心が安定しやすいような感覚もありましたが、あまり過信してはいけませんね。
電動アシストなしで運転してみた
- ……普通の自転車だ!
電動アシストを使わない電動自転車は重いだけと聞いたので、最初は電動アシストを使わずに走行してみました。全くもって普通の自転車と変わらないペダルの重さで、ギアを合わせておけば普通に走れます。
ただ、車体が重いため少しの上り坂でもキツイです。
平地で電動アシストを起動してみた
周りに車が居ないタイミングで電動アシストを最大出力で起動したところ、ガクンッと上半身が置き去りになるほどの加速力を発揮しました。この日で一番ヒヤッとした瞬間でした。
普通の自転車なら「踏み込んだペダルからタイヤに等倍の推進力が伝わる」感覚で、ペダルを踏み込む力に応じてどのくらい自転車が進むか、あらかじめ予想がつきますよね。
電動自転車はそれと対象的で「ペダルを踏み込む力に対して推進力がものすごく大きい」ことに驚きました。その感覚に慣れればおそらく、普通の自転車には戻れなくなりそうです。
林道の坂道を登り始める
ゆるめの傾斜が始まっています。
電動アシストはペダルを踏んだ時に発動するので、ペダルも踏み込めないほど急な坂や重い荷物を積んでいる状態だと厳しいかもしれないことに気づきます。発進に苦労しても、電動アシストさえ発動できればスイスイ走れました。
傾斜は平均◯◯%! 延々と続く坂道に電動アシストが効く
今回の挑戦は「電動自転車で勾配がきつい坂を登る」がテーマです。斜度を測りながら進みたいので、スマホの無料アプリ「傾斜・勾配計」を使用しました。
スタート地点で測ったときは8%くらいでした。
勾配がキツイ坂道を感じたら斜度を計測しよう、と思いながら電動自転車を走らせていましたが、電動アシストを起動している間は坂の存在を感じないのです。
平均12%、最大13%ほどの勾配です。
雨の山道で斜度を測りながら進みます。
全体の斜度は平均すると約12%。ここまで来ると電動アシストをオフにした時、ペダルが重すぎてびくともしません。押し歩きにチャレンジするも「電動自転車の重さ」と「上り坂のきつい傾斜」が合わさり、とてつもない重量感を感じます。
押し歩きをやめて電動自転車を再び走らせれば、先程の押し歩きで苦労したのがウソのようにスイスイ坂を登り始めます。このあたりで、バッテリーが無くなったら詰むと確信しました。
坂道が3km続くのでアシスト控えめの省エネ走行。
ふと見れば水がキレイ!
トレックリングから出発して30分が経過しました。いつもの山歩きや普通の自転車ならそろそろ足腰に疲れが出てきて、キレイな景色を発見しても「休憩しよう!」と、心の叫びが隠せなくなる頃です。それが今回は電動自転車なので、全く疲れを感じていません。透き通った水と新緑が織りなす美しい景色の中で森林浴を楽しめています。
人間がヘビを見つけた瞬間の撮影に成功しました。
滝巡りトレッキングコースの入り口に到着!
ここから徒歩で山に入って、3つの滝を巡るのが一般的な海沢渓谷コースの楽しみ方です。しかし今回は雨で地面がものすごく滑りやすかったため、トレッキングは断念して……
更に上をめざします。
落石が多い模様。頭に当たったらシャレにならないサイズです。
ついに舗装が無くなりました。砂利道を電動自転車で駆け上がります。
道路脇で自生する山菜にテンションが上がる人たち。
人気の山菜「ウド」が車道の脇に生えていましたが、この辺りは動植物の採集は禁止されているので撮影するだけです。
- 奥多摩でウドを見つけるとは思わなかったよ(ニッコリ)
奥多摩は都心部から電車で2時間ほどの距離ですが、豊かな環境です。ツキノワグマが生息するだけのことはありますね。
砂利道は流石にペダルが漕ぎづらいです。電動アシストを最大出力にしていきたいところですが、バッテリーが心配になってくる頃です。
- こういう道ならマウンテンバイクで走りたいわ
大楢峠到着! バッテリーがいよいよマズイ
楢(ナラ)の木が目印と噂の大楢峠に到着! まだ先に進めると思いきや……。
延々と続く坂道により、私が乗ってきた電動自転車はバッテリーがもはや風前の灯に。(Suger Drop)
つるが乗ってきた電動自転車は、バッテリーはほとんど残ってない様子! (Little Bee)
- バッテリーが空になった! なぜかまだ走れるけどヤバイ!!
- 余力があるうちに帰ろう!!
レンタルサイクルへ帰るまでの道中、お土産屋に寄ろうとするも道に迷い、おまけにバッテリー残量がいよいよ危険水準に達してきたため断念。バッテリーに行動が制限されるのも、電動自転車が抱える一つのデメリットかもしれませんね。
お店に帰るまでがレンタルサイクル
バッテリーをなんとか保たせて帰り着いたトレックリング。車体を持ち上げられず、お店に入れない事態に陥ります。
というのも、電動自転車の重量と貧弱な私の腕力が相まって、お店の玄関前にある段差を越えられませんでした。
電動自転車で坂道の走行は楽になりますが、もし家の周りに段差があるなら女性の腕で持ち上げられるか、という視点でチェックするのも重要ですね。
- 熊いなかった~!
- 熊が出なくて残念がる人は初めてですよ
あいにくの空模様ではありましたが、命の危機は回避されました。奥多摩の新緑に包まれてサイクリングできたので、まずは大満足です。
ちなみに晴れた日の奥多摩湖
電動自転車の山道検証をする数日前に撮影した奥多摩湖。広くて景色がキレイ!
猿が普通に歩いてくる
奥多摩に来れば毎回といっていいほど姿を拝めるニホンザルですが、電動自転車で走った日は1頭も見ませんでした。雨の日はあまり姿を見せないようですね。
電動自転車で坂道を登り続けた感想
- 坂道が本当になんともない
- バッテリー残量と人間の駆け引きである
- 行き当たりばったりの行動には向かない
- 家の周辺など馴染みのエリアで使いたい
- 出先で使う時は坂道と距離の情報を知っておきたい
- 電動自転車を買う前に自宅で1日レンタルできたら最高かも
勾配が大きいエリアを登り続ければ当然、バッテリー消費が激しくなります。その代わりと言いますか、万年運動不足の私が3kmの山道を走破しても全く筋肉痛を起こさず快適に翌日の出社時間を迎えられたのでした。
そんな運動不足の脚をサポートし続けたパナソニックの電動自転車ですが、その充電にかかる電気料金はなんと1回あたり約7〜15円! 坂道を快適に走り回ってこのコストです。とんでもなくリーズナブルですよね。ただし、バッテリーは消耗品なので長期間使い続けた後で交換する必要があります。
また、電動自転車で行ける範囲が実質的にバッテリーによって定められるのは少し気になるところです。今回は近隣を知り尽くしたレンタル自転車の情報があったため、ギリギリではありましたがバッテリーが切れる前に帰還できました。実際に生活の中で使うなら、自宅周辺の坂道などの情報や、行き先までの距離をよく確認して検討すると思います。
最も使用頻度が高い勤務先や、荷物が重くなりがちなスーパーに行くときは、電動アシストがあると生活の負担が大きく減りそうだと感じます。
電動自転車のバッテリーを長持ちさせるコツ
充電一回あたりの電気料金は少額ですが、一度に走れる距離を伸ばすためにできることはないのかな? と思い、大友さんに聞いてみることにしました。
- 走行距離をできるだけ伸ばしたいのですが、何か方法はありますか?
- 電動自転車が走れる距離は坂やペダルの負荷によって変わります。サドルの高さも一つの要素ですから、しっかり合わせておきましょうね
電動自転車のバッテリー消費は坂道や体重、ペダルを踏む強さなど負荷によって変わるのだそうです。サドルの高さが合わないと余分な負荷をかけてしまうので、バッテリー消費を抑えて長く走るには、サドルを合わせるのが大切とのことでした。
サドルの高さが合えば、脚への負担も軽減されますからね!
それから、同じ20インチで一緒のルートを走ってきたはずの電動自転車2台で、バッテリー残量に差が表れた理由を考えてみました。
- 男性の方がペダルの踏み込みが強く、負荷が大きくかかった
- 機種による差
- 体重の差
Sugar Dropに乗っていた私の体重が42kg、Little Beeに乗っていたつるの体重が70kg〜80kgです。乗る人の体重もバッテリー消費に差がでる要素の一つには考えられそうです。
パナソニック2機種の乗り心地を比較した感想
今回お借りした電動自転車のメーカーはどちらの機種もパナソニック。しかし、車体が違えば山道で体にかかる負担が変わるかもしれないと思いたちました。そこで、二人の自転車を交換して乗り心地を比較してみることに。
左のパナソニック『Littele Bee』(白い機種)は、ハンドルとサドルがほぼ同じ高さにあるスポーツ自転車の小径タイプです。サドルにまたがると自然に体が前傾姿勢になるので、ペダルを回しやすい乗車ポジションを維持できるのです。
前傾姿勢で下る山道はスリルに溢れていました。
右の『Suger Drop』(黄緑の機種)はサドルがハンドルよりも低い位置にあるシティサイクルタイプ。いわゆるママチャリです。
シティサイクルはサドルにまっすぐ座ることで体を立て、安定した体勢で走り続けられます。急な坂を下るときも安心! ただし、スポーツタイプの自転車に比べればペダルに力が入りづらいです。電動アシストを切って重くなったペダルで、より強い負荷が足腰にかかると感じました。
電動自転車を買うか検討するときは
奥多摩の坂道を走った結果、電動自転車のバッテリーは地形と体重の要因で減り方が大きく変わることが分かりました。つまり、◯◯の機種はバッテリーの持ちがいい! と平野に住む人がクチコミをしても、坂道が多いエリアの人には参考にならないです。
電動自転車を購入するなら事前にレンタルして、いつものように生活してみるのが最も良い手段でしょう。それが難しい時には口コミを参照するしかありませんが、その時はこれらの情報を加味できると最高です。
- 地域(坂道多め・平地多め)
- 勾配レベル
とはいえ、車やバイクと違い維持費が格段に安いのが電動自転車。一般的な自転車に比べれば本体価格こそ高額ですが、坂道や重い荷物を抱えて走るのが日常なら電動アシストがあったほうが体に負担がかかりません。
日常の充電にかかる電気代も電力会社を変えてお得にできるのですから、暮らしを楽にする電動自転車を検討してみてはいかがでしょうか?