フロンガスの必要性と環境へ与える影響について改めて考えてみよう
フロンガスと聞いて思い浮かぶのは、「オゾン層の破壊」という人も多いのではないでしょうか?一昔前までは電化製品で重要な役割を果たしたガスでしたが、現在は使われなくなっています。フロンガスが使われなくなった理由や特性、何に使われてきたのか、詳しく見てみましょう。
フロンガスの歴史と使われなくなった理由
フロンガスは「フロン」とも呼ばれ、1928年に作られた化学物質です。燃えにくい、分解しにくい、人に無害であるなど、優れた性質を持っているガスです。
身近な電化製品に使われてきた歴史があり、スプレー缶や冷蔵庫、エアコンに使われてきました。さらにはICチップなどの精密部品を洗うのに使われたりと、幅広く使われてきたのです。
しかしながら、フロンガスは地球のオゾン層を壊しているということがわかりました。オゾン層は地上から15~35kmあたりにある数ミリの薄い層で、太陽が放つ紫外線を遮る役割を果たしています。
人が使っているフロンガスは分解しにくいという特徴があるので、空気中に漂い10年以上かけて上昇して上空に行き、オゾン層を破壊していました。
すでに南極上空のオゾン層は無くなっており、オゾンホールと呼ばれています。便利で役に立つフロンガスですが、このまま使えばオゾン層を破壊し続けてしまうため、代わりになるガスが開発されフロンガスは使われなくなりました。
フロンガスのデメリットは環境破壊に繋がること
フロンガスは便利なガスではありますが、先述したように環境破壊の要因になるという問題点があります。
フロンガスによるオゾン層の破壊
これは先にも記載したとおり、フロンガスが上空まで上昇し、オゾン層を破壊する現象です。オゾン層が破壊されると、大量の紫外線が地上に降り注いで直接浴びることになり、人の健康にも影響を与えます。これによって、皮膚ガンや白内障などになる危険性が高くなります。
さらには人間以外の生き物にも影響を与えます。植物の正常な成長を阻害し、小魚やプランクトンなどの水中生物にも悪影響を及ぼします。
フロンガスは地球温暖化を促進する
フロンガスは「温室効果ガス」の1つです。温室効果ガスとは、地球上に留まり、赤外線の一部を吸収することによって気温を高くするガスの総称です。地球温暖化によって海水の膨張、海面上昇、生態系への影響などが起こります。
フロンガスがオゾン層を破壊する仕組み
フロンガスがオゾン層を構成している成層圏である上空数十kmまで登ると、太陽の紫外線を受けて分解し塩素を発生させます。この塩素が触媒となり、オゾン層を破壊するのです。
冷蔵庫などの製品に使用されているフロンガスは、そのまま産業廃棄物として処理すると空気中に放出されていきます。しかし工場などでは、フロンガスを使用した製品を外に持ち出せない場合も。そんな時のために、「フロンガス分解装置」というものがあります。
フロンガス分解装置は、熱反応や化学反応によってフロンガスを無害な物質へ変えてくれます。フロンガス分解装置の需要は年々増えており、昔製造されたフロンを使った製品の処理に使われることが多くなっています。
環境への影響を減らした「代替フロン」は有効?
従来のフロンガスは、先述したように環境に大変な悪影響を及ぼすガスであることが分かっています。そこで、フロンガスと同じにように使用しても環境に悪影響を及ぼしにくい「代替フロン」というガスが開発されました。
代替フロンには「代替フロンHCFC」と「新代替フロンHFC」の2種類があります。ちなみに従来のフロンガスは「特定フロン」と呼ばれています。
代替フロンHCFC
「代替フロンHCFC」は特定フロンに比べてオゾン層を破壊しにくい反面、温室効果は高く、二酸化炭素の10000倍もの温室効果があります。
使用している製品にはオゾン保護のラベルが貼られているため、温暖化への影響がわかりにくくなっています。
新代替フロンHFC
さらに改良されて、オゾン層を破壊しにくく、温暖化効果も低くなったガスが「新代替フロンHFC」です。しかし、開発当初の見通しよりもかなり温室効果が高くなってしまい、期待していたような効果は得られていません。
このような比較的地球環境に優しい代替フロンは、特定フロンの代わりに日本でも冷蔵庫やエアコン、発泡剤などに使われてきました。
しかし、代替フロンも環境に配慮されて開発されたガスとは言え、特定フロンと同じく二酸化炭素に比べて地球温暖化効果がかなり高い「温室効果ガス」です。
どちらのフロンにしても温暖化効果は高いので、代替フロンについても製造、使用ともに中止すべきだ、と言う声が出てきています。
フロンガスを使わないで製品製造は可能か?
フロンガスは大変便利で、多くの家電製品に活用されてきました。代表的な使い方は「冷媒」です。冷媒とは、エアコンや冷蔵庫の温度調節に欠かせないガスのことです。その他スプレー用のガスにも使用されています。
このように多くの家電製品に使われていますが、フロンガスを使用せずに製品を製造することは出来るのでしょうか?
フロンガスを使用していない「ノンフロン冷蔵庫」
たとえば冷蔵庫の場合、フロンガスを使用していない製品は「ノンフロン冷蔵庫」と呼ばれており、そのような製品はノンフロンマークを表示しています。
実は現在発売されている冷蔵庫のほとんどがノンフロン冷蔵庫であり、フロンガスが使われているのは昔に作られた古いタイプの冷蔵庫だけです。
ノンフロン冷蔵庫の冷媒としては、イソブタンやシクロペンタンなどを使用しています。
エアコンには代替フロンが使われている
エアコンには冷媒として代替フロンが使われています。エアコン製造各社は、オゾン層に影響を与えず、かつ冷媒として機能を損なわない物質として代替フロンが最適と考えています。
ちなみにオゾン層や温暖化に影響を与えない冷媒として、
- 二酸化炭素やプロパンなどの自然冷媒
- 冷媒になる物質を新たに開発すること
が考えられています。温暖化にも影響を与えない冷媒の研究は行なわれていますが、エアコンへの使用にまでは至っていません。
また自然冷媒は、エアコンに使う要件を満たしていません。アンモニアは毒性があり、プロパンには燃焼性があり、二酸化炭素は冷媒としての効率が悪いです。ただ、アンモニアは安全管理の行える大型空調機に、二酸化炭素は給湯器の冷媒として使われています。
このような理由から、今のところ代替フロン以外の冷媒を一般的なエアコンに使用することはありません。
フロンガスを安全に処理する方法
フロンガスが使われている製品を処理する時は、安全かつ適切に処理するため環境省が定めた
- 「フロン回収・破壊法」
- 「家電・自動車リサイクル法」
によって、フロンガスを無駄に放出しないよう処理することが決められています。
冷蔵庫やエアコン以外にも、洗浄剤やスプレー缶にも使われています。専門の業者に回収を依頼するか、リサイクル法で定められた方法で引き取ってもらう必要があります。
フロンが使われている電化製品などは、専門業者に回収され処理されます。その場合、フロンを取り出し圧縮してボンベに回収する方法、プラズマ分解などによってフロンを分解し、無害な物質に変える方法があります。
断熱材などにもフロンは使われていますので、これも回収し、適切に処理されます。ただし直接専門業者に回収を依頼する場合、中には必要以上に金額を高くして要求したり、回収してそのまま不法投棄するような悪徳業者もいます。
違法に処理すると、そのままフロンが空気中に放出し環境を破壊します。そのため、私たち消費者は正しく処理してくれる業者に回収を依頼する義務があるのです。
フロンガスは、エアコン使用が欠かせない現代において大変便利な存在です。しかし、環境に及ぼす影響は気になるところですね。フロンガスに代わる新しい冷媒ガスの開発が期待されます。