アセチレンガスとは?
アセチレンガスの特徴
アセチレンガスは、常温の場合、無色透明の気体であり、少しだけエーテルに似た臭いがします。
ガスの比重としては、空気よりも軽く(アセチレンガスが0.9073で空気が1です)、沸点はマイナス83.8℃、凝固点はマイナス81.5℃です。
高い火炎温度
アセチレンガスは、可燃性ガスの中で最高の火炎温度となっています。
参考までに、メタンガスの火炎温度は2780℃、プロパンガスは2800℃、プロピレンガスは2900℃、エチレンガスは3000℃、そしてアセチレンガスは3300℃です。
そのため、溶断ガスとしての性能において最も優れていると言われています。
優れた作業性
アセチレンガスは、すべての溶断ガスの中で最も発熱量があり、着火温度の低さ(305℃)のおかげで着火しやすくなっており、燃焼範囲の広さと相まって火炎がコントロールしやすいことから、優れた作業性を持つガスと言えるでしょう。
酸素消費量が少なめ
アセチレンガスは、溶断ガスの中で最も酸素の消費量が少ないことで知られています。
(プロパンガスのおよそ4分の1)
酸素の消費量が少ないため、酸素容器を使う数を減少させることができます。
アセチレンガスの作り方(溶解アセチレン)
炭化カルシウム(カルシウムカーバイド)に水をかける(含ませる)ことで、アセチレンと消石灰が発生します。
次にアセチレンに含まれる不純物を清浄装置を使って取り除いた後に、圧縮機を使用してアセチレンを圧縮します。
圧縮して水分と油分が取り除かれたら、多孔物質(ケイ酸カルシウム固形物)に溶剤(アセトンもしくはDMF)を浸透させた容器に充填して完成します。
アセチレンガスの使用用途
アセチレンガスは、鉄筋の圧接や金属の溶接や溶断、溶射やロウ付け、鉄板の切断、鋼材の焼入れに使われます。
他にも、製缶品の歪みを取るために使われたり、原子吸光分析や炭素化合物の炭素原料として使用され、カーボンブラックの原料にも使われるなど、幅広い用途があります。
アセチレンガスの注意事項
アセチレンガスは、爆発の危険性があるため、細かな注意事項があります。
容器の移動や運搬の際の注意事項
- アセチレンガスの容器を運んだり移動させるときには、くれぐれも引きずったり、または倒したり、地面や床などに落としたり、壁や家具などにぶつけないように注意します。
- 移動させる時には、アセチレンガスの容器専用の手押し車を使用します。手で移動させる際には、容器を傾けるようにして、底の縁を使って転がしながら行います。
- 専用でない他の車を使う場合は、転落を防止するために、しっかりと縄がけをします。
- アセチレンガスを使わない時は、必ず容器バルブにキャップをしてから、容器バルブ保護キャップを着けるようにして、きちんとバルブを護るようにします。
- シートなどで覆うことで、直射日光を避け、温度が40℃以上にならないようにします。
容器の保管や貯蔵の際の注意事項
- アセチレンガスの容器は、燃えない材料で作った風通しの良い場所に貯蔵します。
- 貯蔵は直射日光が当たらない場所で行い、室温を40度以下に保つようにします。それから、多くの人が出入りする通路などの場所や、地下室には置かないようにします。
- 容器の近くに電気器具や配線やアース線がないところに置くようにします。また、容器のそばには、灯油やガソリンなどの可燃性のものを置かないようにします。
- アセチレンガスの容器は、酸素や塩素などの容器の近くには置かないようにします。
- 必ず、空の容器は充填された容器と別の場所に置くようにします。
使用する際の注意事項
- アセチレンガスの容器を使う前には、必ずパッキンがきちんと装着されていて、破損していないことを確認します。
- 風通しが良く、直射日光の当たらない場所で使用し、充填容器の温度は必ず40℃以下で保つようにします。
- 容器が転倒や転落をしないように注意します。
- 容器の近くには燃えやすいものは置かないようにします。
- 必ず容器からガス漏れがないことを確認します。
- アセチレンガスの容器は、必ず立てた状態で使うようにします。
- 事故を避けるために、必ずアセチレン専用のホースや圧力計や減圧弁を使用します。
- アセチレンガスの容器には、逆火防止装置の取り付けが義務付けられています。
- バルブの開け閉めは、静かに慎重に行うようにします。
- 溶接や切断の作業をしている時は、着火事故を防止するために、バルブの開閉用のハンドルをバルブにつけたまま行います。
- アセチレンガスの容器には、絶対に溶接の火花などの火が近づかないようにして、ホースは遮蔽物で護るようにします。
- トーチに点火した状態での調整器を使った圧力操作や、容器のバルブを閉めることのないように注意します。
- アセチレンは、容器一本あたりにつき、1時間に1kg以下の消費ペースを保つようにします。もしも1時間に1kgを超える消費ペースの場合は、集合装置(マニホールド)を必ず使うようにします。
アセチレンガスの災害
アセチレンガスは、着火しやすい性質を持ち、酸素のないところでも燃焼します。
また、高温度の炎を発生させ、滞留しているアセチレンガスに火が燃え移った場合は爆発を引き起こします。
それからアセチレンボンベの中に火が入ってしまいますと、ボンベの中で燃え続けます。
温度が105℃になると安全弁が融解してしまい、ボンベの中に入っているアセチレンガスが外に吹き出てしまいます。
一旦融けてしまった安全弁は、二度と閉めることはできなくなってしまうため、アセチレンガスがボンベの中からなくなるまで外に吹き出たままになります。
そしてすでに火災現場などの高温に触れてしまったアセチレンボンベは、外からの熱のため、ボンベとしての役割を果たすことができなくなります。
アセチレンガスの災害対策
アセチレンガスの災害状況には、大きく分けて3種類があります。
アセチレン容器が火あぶりとなる状況
まずはアセチレン容器を速やかに火元から遠ざけることが先決です。
もしも容器を移動させることができない場合は、容器を水で冷やすようにします。
安全弁は105℃になるまで融けることはないため、少なくとも水で冷やしている間は、ボンベ内のアセチレンガスが吹き出すのを止めることが可能です。
バルブから噴出したアセチレンガスが引火して燃焼している状況
引火して間もない場合であれば、バルブもしくは調整器の先から出ている炎が確認できれば消火することは可能です。
火が消えたらすぐにバルブを閉めて、ガスが外に出るのを止めます。
とはいえ、引火して間もない状況で、消防車が到着するケースは滅多にないようです。
安全弁が融解してしまい、アセチレンガスが噴出して引火した状況
仮に消火が完了しても、安全弁が融解してしまっているため、アセチレンガスは外に排出されるままの状態となります。
この場合、最も有効なのが、ボンベを水に沈めることです。
水に沈めることでボンベの温度が上がるのを防ぐことができるため、もしも安全弁からガス漏れを起こしていたとしても、水面から出てくるガスを燃焼させながら、ボンベを冷やしておけるので、二次災害には発展しない可能性が高まります。